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【クラクラ小説】「TH5 グローバルチャット。そしてクランへの加入」

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ここではない場所。いまではない時代。

ペトラルカ=チーフの物語。

11歳になったペトラは自分の生まれ育った村から足を伸ばし、近くの大きな街(グローバル=チャット)にやってきました。

「建物おっききいねぇー。人がおおいねぇー」

目を輝かせてきょろきょろと周りを見回すペトラのそばに付き従うのは、村人娘と、護衛役のジャイアントです。

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ジャイアントはその名の通り、身長がペトラの3倍はあります。

ヒトに比べれば異形の存在ではありますが、この国ではあまり珍しくなく、ペトラのほかにも護衛として引き連れている者はちらほらいます。

ペトラと村人娘の二人旅ではぶっそうだろうと、魔法使いたちがお付によこしてくれたのでした。

ペトラは、このような大きな街に来るのは生まれて初めてでしたので、ジャイアントが後を追うのに苦労するほど店から店を飛び回っておりました。

「ねー!このかわいい服。魔女さんに似合うかな?」

少女が、村人娘にむけて掲げた女物の服は、びっくりするほど鮮やかなピンク色でした。

「似合わなそうですね…悲しいほどに…」

この街はペトラのような「村の主」たちが集まり、話し合い、情報を交換し、そして買い物をする場所です。

なかでも一番目立つのはクラン勧誘の声です。

クランとは村同士の同盟のこと。どこのクランも、自分のところに素晴らしい仲間を引き込もうと一生懸命です。

「クラン員ぼしゅうちゅ。援軍盛ん。女性が多いです!」

「入ってくれたら即・サブリーダーにします!」

「。」

街にこだまする声に村人娘はすこしうるさそうな顔をしていますが、ペトラは楽しそうにしています。

「どのクランに入ろうか。うーん楽しみー」

その時。浮かれるペトラの右足に、後ろからだれかがしがみついてきました。

まとわりつく手が細かったので、ペトラは最初、迷子の男の子かと思いました。

しかし、男の子と思ったのはペトラの勘違いで、その緑の顔は、まぎれもなく小悪魔のゴブリンでありました。

ゴブリン

言わずもがな、ペトラはゴブリンが大嫌いでしたので、悲鳴をあげて足を振り払おうとしました。
しかしゴブリンは離れません。

そしてそこに、10人ほどの一団がやってまいりました。

いずれも、目の覚めるほどに白いマントを身にまとい、傲然と胸をはり、ゴブリンを冷たい目で見ています。後ろにはペトラ同様、ジャイアントを一人連れています。

すると、さきほどまであれほどうるさかった路上は静まり返り、街角の視線は男たちと、ペトラに集まりました。

その集団の先頭に立つのはひときわ背の高い、ペトラがみるに「偉そうな連中のなかでも一番偉そうな」男で、マントを留めた赤い骸骨のブローチを片手でもてあそんでいます。

ブローチから手を離した男は、そのまま腰に佩いた剣を抜き、ゴブリンに向けて切っ先を突き付けました。

村人娘がペトラの前に立ちふさがって「何するんですか!」と叫びました。

「お前たちには用はない。安心しろ。俺の用があるのはそのゴブリンだ」

男は剣先をゆらゆら動かしました。

「うちのキャンプにはいらないのでね。削除するところさ」

ひぃっとゴブリンはペトラの足にさらに強くしがみつきました。ペトラはゴブリンが大嫌いでしたけれども、それ以上にこの男を「なんか、嫌いだ」と思いました。

不思議なことにこのときのペトラは、この哀れなゴブリンを、あんなに嫌いなゴブリンを、「かわいそうだ」という気持ちになっていたのです。

すると男が剣をペトラに向けてきましたので、少女は視線で、後ろの巨人に助けを求めました。

うなずいたジャイアントが前に進み出るやいなや。

逆に、男たちの護衛のジャイアントが前に飛び出し、拳を一閃。

ペトラのジャイアントを殴り飛ばし、のしかかり、顔と言わず体といわずめちゃくちゃに乱打しはじめました。

その力の差は歴然です。

「やめて!」

ペトラは泣きながら悲鳴をあげました。

男たちはあざけるように笑いました。

「お前のジャイアントのレベルはいくつだ?1か?俺のはレベル7だ。かなうと思うのか?」

たちまち血まみれになるジャイアントを、見ていることしかできないペトラと村人。そしてゴブリン。

そのとき。涼やかな、しかし大きな声があたりに響きました。

「やめましょうよ。可哀想に。ゴブリンも女の子も怖がっていますよ」

ペトラが目を向けると、そこにいたのは黒マントの集団でした。声を発したのは先頭に立つリーダー格の男のようです。

白マントの男は最初驚き、次に余裕のある表情を取り繕って言いました。

「ああ、これはこれはカール殿。御機嫌よう」

カールと呼ばれたその男は、まず白マントの男にジャイアントの暴力をやめさせると、次に提案するように言いました。

「どうでしょう。ルドルフ殿。この子をあなたのクランに入れてあげて、このゴブリンを援軍を入れてあげるのは。ルドルフ殿はゴブリンが処分できるし、女の子はゴブリンがもらえる。悪くない考えだと思うのですが」

ルドルフと呼ばれた男は舌打ちをしましたが、路上の人々が自分を冷やかに見ているのを感じると、「そうしよう」とうなずき、懐から紙をとりだしました。

「娘。お前の名前はなんという」

「えっと…」

「ペトラです」

村人娘が代わって答えました。

ルドルフはサラサラと紙に文字を書き付けました。

「これでお前は俺のクランの一員だ。いま、このときをもって、お前にそのゴブリンを援軍として寄付しよう。好きにするがいい」

ゴブリンは「助かった…」と言ってひれ伏して涙を流しました。

ペトラがほっとして、「ありがとう」と言いかけたそのとき。

ルドルフはペトラのほうにつかつかと近寄り、ふくらはぎのあたりを靴で軽く蹴りました。

手加減されていたため、痛くはありませんでしたけれども、突然の失礼な行動にペトラは言葉がありませんでした。

「キックの儀式さ」とルドルフは薄笑いをして言いました。

「俺のクランにペトラとやら、お前はいらないからな。」

どうやらペトラは、ルドルフのクランに一時的に加入させられ、すぐに追い出されたようでした。

「今日はゴミが有効に処分できて気分がいいな」

そういってルドルフは、仲間の男たちを引き連れて立ち去って行きました。

「感じ悪いですねえ…」

と村人娘がため息をつきました。

カールは泣きそうな顔のペトラを気遣ってくれ、膝をついて埃を手で払ってくれました。

彼はルドルフとは違い、とても優しそうな顔をしていて、それでどこか凛々しい雰囲気があり、部下といわず町の人といわず、まわりの人たちからとても尊敬されているのが伝わってきました。

なんとなく顔が赤くなったペトラが、カールの胸元をふと見ると、ルドルフ同様、ドクロのブローチを付けているのが見えました。

「あなた、あの人の仲間…?同じクランなの?」

青年は笑って「違うよ」と言いました。

「これはチャンピオンマークっていうんだ。国を強く大きく広げた王だけに与えられる証だよ」

「すごいね」

「すごいよ。でも、ああやっていばるのはよくないよね。」

青年は長めの前髪をかきあげながら、なんだか申し訳なさそうに言いました。

ペトラは勇気を振り絞って言いました。

「あなたのクランに入れてください!」

「ごめんね」

カールは言いづらそうに、しかし即座に拒否しました。

「僕のクランはいま、さっきのあいつのクランや、ほかの強いクランと戦っているところだから。だから、なんていうか、まだ未熟な村の君を入れるわけにはいかないんだ。ごめんね」

ペトラは肩を落としました。

「でも、強くなったらぜひおいでよ。そうだ。かわりにあのクランを紹介してあげるよ」

カールが指さしたほうにいたのは、冴えない痩せた中年の男でありました。

「あの人のクランはそれほど大きくはないけれど、親切な人が多くて君にはきっと向いていると思うよ。」

ペトラは内心、この「格好いいお兄さん」のクランが良かったなと思いつつ。

今は仕方ないかと思いつつうなずくと、カールがすぐにそのクラン主と話をつけてきてくれました。

青年に話しかけられた中年の男の驚きと緊張ぶりは笑ってしまうほどで。

カール率いるクランはよほど有名で大きいんだろうなと、ペトラにもなんとなく察しはつきました。

「じゃあ、僕はこれで」

ペトラがクランに入ったのを見届けると、カールは笑顔を残してその場を仲間と去っていきました。

立ち去るカールをじっと目で追うペトラの背中を、誰かがちょんちょんとたたきました。

見ると、さきほどのゴブリンが手の平の上に赤いドクロのブローチを乗せてこちらに差し出しておりました。

「これ、盗んできたよ。お礼に、あげるよ」

せつな、町のどこからか、怒号が聞こえてきました。めちゃくちゃに、怒っているようです。

あの、「感じの悪い」ルドルフの声です。ペトラは口を丸くあけました。

「ひょっとしてこのブローチ…」

ゴブリンはニヤニヤ笑っています。

村人娘はあきれたように言いました。

「あっぶないことしますねえ。さすがゴブリンというか、なんというか…」

ペトラはくすっと笑って、ゴブリンの手をそっと押し返しました。

「ありがとう。でもね、これいらないや」

ゴブリンは驚いたように尋ねました。

「欲しくない…?」

ペドラは首を振りました。

「欲しいよ。欲しいけど、でも自分の力で手に入れるよ。それでカールさんだっけ。あの人みたいに立派なチャンピオンになるよ。私」

「素敵です、チーフ」

村人娘は嬉しそうに手をあわせて喜びました。

「チーフなら、なれます。きっと。思いやりがあって、優しくて、格好がいい、世界一のチャンピオンに」

それからペトラと村人娘は、ゴブリンを先に村に帰し、けがをしたジャイアントの看病をしながら回復を待ちました。

そして数日後、村に帰ったペトラたちを待っていたのは、荒れ果て、変わり果てた村の姿でした。

特に集中的に壊されていたのはクランの城の付近。あわてて城に駆け付けたペトラたちの目に飛び込んだのは、

あのゴブリンの、ぺちゃんこに押しつぶされ絶命した姿でした。

「せっかく、助かったのに…」

ペトラがぺたんと座り込んで、うつむきました。

所在ない村人娘があたりをなにげなくみまわすと、高い木の枝に、黒い布がひっかかっているのが見えました。

過日、ルドルフの巨人が着ていた服の色です。

この村を壊したのが誰か。わかりました。

「この世界で。本当に怖いのは。ゴブリンではなく、人間」。

村人娘はその言葉を飲み込んで。

落ち込むペトラの背中をいつまでもさすりつづけました。

<つづく>

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コメント

  1. 俺! より:

    途中ちょっと生々しい様な気がしましたがとても良い話でした!さすがポンタさん!

  2. k より:

    ゴブリンの死に方、ジャイアントの血まみれ描写もちょっと生々しいよ、、、
    どうしちゃったんだポン太さん(;Д;)(;Д;)

  3. せつな より:

    いや〜素晴らしい!
    引き込まれます。今一番たのしみなコンテンツです。
    ヒーラー姉さんゴメンよ…
    絵本にでもならないかなぁ

  4. とあるクランのサブリーダー より:

    前回のWBの生まれた経緯や今回のキャンプからの削除の部分にグローバルチャットを街と見立てるところなどその表現力と独自の発想は読み手の想像を超え驚きと感動を与えてくれます。文章のもつ美しさを堪能させてもらい感無量です。公式さんに申し上げたいのは、この絵本があったら間違いなく購入するということ。出版まだー!?

  5. 最近見始めました より:

    公式のような設定すごいです。
    WBの設定やリアルにキックするとか発想すごいですw
    更新楽しみにしてます~

  6. くらりん より:

    小説よりもヒーラー姉さんはよ

  7. HIT より:

    深みが増してきましたね♪
    自分は小説好きです!
    楽しみにしてます!

  8. わだ より:

    個人的には、対ゴブリンが見たかった、ゆくゆくはゴブリンキングを倒すみたいな…
    人間同士で戦うようになってからはちょっと…
    でも、これからのストーリーに期待!

  9. Ponta より:

    わださん
    だってそういうゲームじゃないか!

  10. Ponta より:

    >さぶいぼさん
    一か月くらい前までは批判コメントを積極的に載せてたんだけど、不愉快だ、アクセス稼ぎの炎上商法だって叩かれて、やめたんだ。
    だから君のコメントものせるの控えたんだけど、そしたらそれで、君にはよいしょのコメントしか載せないって言われるんだ。むつかしいよね。

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