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【クラクラ小説】「TH6 ヒーラー」

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ここではない場所。いまではない時。

ペトラルカ=チーフの物語。

せんだっての襲撃で、甚大な被害をうけたペトラの村。けが人も多数。

ペトラの祖父や魔法使いのブリュワーといった人々も大なり小なり傷を負っています。

「どうしよう。こんなときにまたゴブリンに攻められたら…」

頭を悩ますペトラに村人娘が、思い出したようにいいました。

「チーフ。”天使”の話を知ってますか?」

「天使?」

「天使と呼ばれる女のことです」

ペトラはうなずきました。

「知ってる。どんな傷でも、不思議な魔法で治してくれるっていう、羽根の生えた女の人のことでしょ?」

「そうです。すごいらしいですよ。手から出す光で、どんな怪我人もたちどころに治るらしいです」

「え、じゃあ」

「はい。この村のけが人もぜひ治してもらいましょう。ちょうど、この近くの港町に立ち寄っているという話です。行って頼んでみませんか」

ペトラと村娘はさっそく、その港町にやってきました。

通りすがりの水夫に”天使”の所在を尋ねると、すぐに居場所はわかりました。常在の酒場にいるようです。

「天使が、酒場…」

首をかしげながら二人がたどり着いたその酒場は、路地裏の小汚い店で、入るのも躊躇するほどでしたが、傷ついた村の人々のためということで、勇気を決して入口をくぐりました。

店に入った二人の目に飛び込んできたのは、カウンターに突っ伏した、背中に大きな羽根の生えた女のだらしない飲み姿でした。

女はそこでグラス片手に、起きているのか寝ているのかわからない風体で、すっかり酩酊しておりました。

一瞬ためらったのち、ペトラは思いきって声をかけました。

「天使さん…?」

ペトラの呼びかけに、女はアルコールに濁った眼で一瞥を返すと、すぐにまたカウンターにふせました。

村人娘はあきれたように言いました。

「聞いていた話とずいぶん違いますね。どこが天使ですか。この人」

「違って悪かったね」

女は酒臭い息をふたりに吹きかけました。

「あたしは天使じゃないよ。ヒーラーってんだ」

2014-04-18-13-22-12

ペトラはヒーラーへ簡単に自己紹介をしたあと、頭を下げて言いました。

「私の村にけが人がたくさんいるんです。助けてください」

ヒーラーは吐き捨てるように笑いました。

「やーだね」

あおる酒。

「誰が。そんな、一銭の得にもならないこと。したくないよ」

それを聞いた村人娘はすこし語気を強めていいました。

「治せるんでしょう?癒しの力があるんでしょう?そんな、死んだような目で、こんなとこで酒飲んでたってしょうがないでしょう?」

「この目はもともとだよ!」

ペトラの哀れむような目にヒーラーは傷ついたように言いました。

「いまはこんなだけどさ、あたしはね、天使だったんだよ。これでも。本当に。天国に住んでいたんだ」

ペトラは信じます、というようにうなずきました。

「それが一年前。ちょうど一年前。地上に見回りに降りたとき。ちょっといい男がいてさ。狩りで怪我してるのを治してやったのが運のつき。その男はあんたみたいなリーダーでさ。私の力を役立つって思ったんだろうね、言葉巧みに、自分の村にあたしを連れ込んでさ。けが人の看病に、戦争にこき使いやがってさ」

「断ればよかったのに」

「男と女だったからね」

ヒーラーは酒をグラスに注ぎました。

「挙句の果てに、そいつ、自分のタウンホールレベルが上がったら、『ジャイヒーでしか使えないババアはいらない』とか。『お前の目が気持ち悪い』とかさ。笑っちゃうよね。さっさと別の若い女を嫁にして、私はお払い箱だよ」

「…」

「挙句の果てに、私は俗世の欲望に手を貸した罰として天国に戻れなくなっちまったよ。人間を助けた見返りが、これ。あーやになっちゃうね。がんばったんだよあたし。がんばったのに、これだよ」

そういってヒーラーは酒をまた一気にあおりました。

「だから私はいま、地上でこうして、どこの誰も助けず、おとなしく功徳を積んでるってわけ。これ以上、どっかの人間を助けたら、二度と帰れない。天国に。もう天使になれなくなっちゃう」

功徳。こんな、飲むか死ぬか2者択一みたいな酒の飲み方をして、功徳がたまるんだろうか。

村人娘はそんな素朴な疑問が頭をよぎりましたが、口に出すのはやめておきました。

ヒーラーは遠い目をしました。

「天国はいいよ。戦いがない。血が流れない。だます男もいないしさ。人間にはもううんざりだ」

ペトラは言い返しました。

「人間はそんな悪いひとばかりじゃないよ」

ヒーラーはペトラをにらみました。

「どうかねえ。あたしがその村から追い出された日。村の連中、みんなであたしを見に来てさ。捨てられた女を笑って。馬鹿にして…忘れられないよ」

「違うと思うよ」

ペトラは首をふりました。

「きっとみんなヒーラーさんに、ありがとうって言いたかったんだと思うよ。助けてもらってありがとうって。ごめんなさいって。でも言えなかった。そんな気がするよ」

「…」

「それに。その癒しの行為が、悪い男の人に騙されてやったことだとしても。傷ついた人を治すの、いやだった?けがをした人の家族を笑顔にしてあげるの、いやだった?自分にしかできないことができるの、私だったらすごく誇らしいと思う」

「知った風なこと言ってんなよ!」

ヒーラーは椅子から立ち上がって怒鳴りました。ペトラは続けます。

「私はヒーラーさんのことをすごいと思う。みんな、人を傷つけることばかりのこの世界で、自分のことしか考えていない人たちのなかで。ほかのひとのために働いて、ほかの人の苦しみを救ってあげて」

ヒーラーは黙ってしまいました。ペトラは最後に頭を下げてこう言いました。

「いま、私の村に傷ついている人がいます。みんなみんな、困っています。癒しの力を使ったら、もう天国に戻れないっていうのなら、癒す方法だけでも教えてほしい。待ってます」

ペトラは再度、頭を下げ、村人娘とともに酒場を立ち去りました。

ヒーラーは空になったグラスをじっと見つめたあと、静かにそれを置いて、千鳥足で酒場を出ていきました。


それから数日後。村に戻ってけが人の治療にあたるペトラと村人娘の耳に、いやなうわさが入ってきました。

あの、白マント男・ルドルフの支部クランが、ペトラの村に侵攻すべく、新兵器を開発しているというのです。

ウォールブレイカーを空に浮かべて、爆弾を落とさせる、「エアバルーン」という新ユニットです。

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それを知ったペトラは魔法使いのハンターを村の見張り塔に上らせて警備をさせ、あわせて対空砲の建設を始めました。

しかしその準備も整わぬ数日後、敵の襲撃は急にやってきました。

タウンホールでペトラと村人娘、そして魔法使いで話し合っていたそのとき、轟音がとつじょ、響き渡りました。

魔法使いハンターがすぐに立ち上がり「やりやがったな!」と席を立って怒鳴りました。

そして窓の外を見て歯噛みしました。

「軍事施設しか狙わないって話じゃねえか!民家まで無差別に狙ってやがる!」

赤い風船のエアバルーンから、雨あられのように降り注ぐ爆弾。

村に響く阿鼻叫喚。地獄絵図です。必死に逃げ惑う人々に対し、避難場所を指示するペトラ。

対空砲はまだ出来上がっていない中、ハンターやアーチャーも必死の防戦をしています。

その甲斐あって、住人をあらかた避難させ終わり、ペトラが安堵したそのとき。

ペトラの真後ろにエアバルーンの落とした爆弾が炸裂しました。

圧倒的な爆風でペトラたちは吹き飛ばされ、あわせて土煙とがれきが大きく舞い上がりました。

ペトラは気を失いました。

まもなく意識を取り戻したペトラは、土にまみれながらも無傷でしたが、すぐ隣に村人娘が倒れており動かないことに気づきました。

急いで彼女を抱き起すと、胸に大きな血のシミができているのがわかりました。

そしてそれがどんどん広がっていきます。

ペトラはその意味するところに気づき、顔を青くしました。

だれか、だれか。ペトラが声にならない声でつぶやきながら、がくがく震えているうちに村人娘の口から血がこぼれでました。

彼女の顔が青白く、そして呼吸がだんだん浅くなっていきました。

死ぬ。村人が死ぬ。

ペトラの頭の中が真っ白になり息が苦しくなり、涙がぽろぽろこぼれました。

やだやだ。だれか。助けて。

その願いむなしく、村人娘の息が静かに止まろうとしたそのとき。

天空からふりそそぐ優しい光が、静かにふたりの体を包み込みはじめました。

するとどうしたことでしょう。村人娘の服の赤いシミの広がりがとまり、またたくまに顔の血色もよくなっていきます。

ペトラがあわてて空を見ると、そこには、翼をゆっくりはためかせながら、空を舞うヒーラーがおりました。ヒーラーはにんまり笑って叫びました。

「どーよ!」

ペトラはありがとう、ありがとう、ありがとうと何度も頭を下げました。

ヒーラーは照れくさそうに手を振りながら言いました

「ケガ人はあたしが治す。かたっぱしから。だからペトラ、あんたは防衛の指揮をとりな」

「でも…村人が…」

「やるべきことをやんな。ペトラ。治す、癒すのがあたしの仕事。生きがい。あたしにはそれができる。そして、それしかできない。だからあんたも、あんたにしかできない仕事をやるんだ」

「でも」

ヒーラーはまるで小さい妹を諭すように言葉をつなぎました。

「ペトラ。戦場のリーダーってのは、友達が血を吐いていても平気な顔をして、指揮をとるもんだ。心が悲鳴をあげていても、冷たいって誰かに誤解されても。平然と偉そうにしてなきゃなんないんだ。それがあんたの仕事だよ。腹をくくりな」

ペトラは唇をかみました。

「早く!」

「わかった」

ペトラは村人娘を草むらにそっと横たえると、タウンホールに向かって急いで駆け出していきました

ヒーラーが「いい子だ」とうなずくと、せき込みながらも体を起こそうとうする村人娘に視線をうつしました。

「まだ無理せず寝てなよ」

村人娘は苦しそうに、でも精いっぱいの笑顔で言いました。

「天国に戻れなくなっちゃいましたね、ヒーラーさん」

ヒーラーはちょっとだけ寂しそうな顔になったあと、それを隠すように誇らしげな声で言いました。

「ま、みんなヘラヘラ笑ってる天国よりも。傷ついて泣いてるやつばっかのこの世界のほうが、あたしの性にはあってるみたいだ」

「さすが、堕天使ですねぇ」

「…あんた、傷口またこじ開けるよ」

村人娘は笑いました。

「ま、堕天使かもしれないけど」

「けど?なんだよ」

「堕天使かもしれないけど、あたしの傷を治してくれてるときのヒーラーさんは、まぎれもなく天使に見えましたよ」

それを聞いたヒーラーはすこしだけ顔を赤らめながらしばらく黙った後。

片目をつぶって、村人娘に親指を立てました。

「当然でしょ!」

そしてヒーラーは翼を大きく羽ばたかせると、さらに高く舞い上がり、逃げ惑う人々に向かって威勢よく叫びました。

「さー、けが人はどこだー!?あたしが治すよ!じゃんっじゃん連れてきな!女の生きがい、なめんなよー!?」

その日、天空を埋め尽くす赤い風船が、敵意の塊を落とし続けるなか。

その敵意に抗するかのようにひとり空を舞うヒーラーの白い翼と、ペトラの声が、人々の希望として深く記憶に刻まれていきました。

<つづく>

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コメント

  1. ぼくらいだー より:

    ペース早すぎぃ(›´ω`‹ )次々更新されて面白いですけどあっという間に終わりそう!w

  2. リク より:

    ちょ、うわ~…かっこいい~…部屋で読んでたら多分泣いてました。

  3. みすけ より:

    やぺぇす…泣けますわぁ…。
    リーダー更新ありがとうございます!

  4. より:

    待望のヒーラーさんキマシタワー

  5. のり より:

    ヒーラーかっけぇぇぇ笑
    男気溢れまくりですね🎵

  6. 読者 より:

    この短編を読んで、ここ半年以上ヒーラーを使って無かった事に気がつきました(^^;;
    AQW出来る体制が整ったら、宜しくお願いしますε-(´∀`; )

  7. ポンコツリーダー より:

    ヒーラー姐さん…酒呑んでたら功徳は積めないよ…
    毎回楽しませて頂いてます。これ、公式が出しててもおかしく無いぐらい出来が良いデスね!

  8. サラチスト より:

    今までの村人とヒーラーの仲の良さをブログで見てきたせいか凄い泣けた。。。

  9. Ponta より:

    みなさん!ありがとうございます!

  10. つぶあん より:

    えぇ話やぁ。(T^T)うぅ 次のアップグレードはヒーラーにしよう。

  11. かえで より:

    まさか、こんなに、壮大なスケールになるとは

  12. わだ より:

    これ読んで気付いたけど、対ゴブリンうんぬんじゃなくて、話がTH5ぐらいからまとまりがなくなってきて、漫画チックになってたからかなぁ
    心なしか、文体も変わった気がするし……

  13. akira より:

    いやー面白いwwここまで脳内再生できるクラクラは初めてかもww
    楽しませて貰いましたw

  14. らら より:

    ヒーラー姉さんが斬るコーナーのあの二人の友情の裏にはこんなエピソードがあったんですね♪伏線回収のようで面白いです。
    村人の毒舌の中にも愛がある感じ。一緒に温泉に行く仲の良さ。納得です。

  15. ピッコロ より:

    更新、お疲れ様です(*^_^*)
    まったくヒーラーを使ってなくて、ちょうど「ハニートラップ」強化の為にヒーラーをアプグレ着工したところだったので、今回の話はタイムリーでした♪
    確か・・・「ハニートラップ」の命名もポンタさんとお聞きしたのですが・・・(^^)v

  16. Ponta より:

    > ぼくらいだーさん
    あと4章。もう4/10です。
    >リクさん みすけさん
    ありがとうございます
    >あさん
    すごく待望されていました。
    >のりさん
    ヒーラー!ヒーラー!
    >読者さん
    使ってください。かなり、いけてます。
    >ポンコツリーダー さん
    公式さん、オナシャス!
    >サラチストさん
    だから仲良くなった的な
    > つぶあん さん
    ぜひヒーラー姉さんをアプグレおなしゃす
    > かえでさん
    ありがとうございます。
    > わだ さん
    だってだんだんゴブリンがどうでもよくなっていくゲームですもの
    > akira さん
    すげー嬉しい
    >らら さん
    ご納得いただけましたか。。
    >ピッコロ さん
    「ハニートラップ」の命名者は私です

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